「志望動機の途中で『貴社』と言ってしまい、面接官の表情が一瞬変わった気がして固まった」
「ESに『貴社』と書いてある原稿を、面接でそのまま読んでいいのか分からない」
似た二字なので、緊張した本番ほど頭の中で入れ替わりやすい場面です。間違えたら不合格になるのでは、と不安になる学生も多いです。
面接などの話し言葉では「御社」、ESやメールなどの書き言葉では「貴社」を使います。 一度言い間違えても、短く訂正して会話を続ければ、それだけで不合格になるものではありません。
元日系大手人事として新卒採用に5年以上携わってきた成田さんは、呼び方を一度間違えたことより、短く直して会話の中身へ戻れるかが大切だと考えています。本記事では、その経験をもとに、「御社」と「貴社」の使い分けや面接・ESでの例文、言い間違えたときの対処法を採用現場の視点から整理します。読み終えれば、面接・ES・メールのそれぞれで、どちらを使えばよいか迷わず判断できるようになります。
御社と貴社の違いは?
違いは意味ではなく、話すか書くかです。 どちらも相手の会社を敬う言葉で、面接・電話では「御社」、ES・履歴書・メールでは「貴社」が普通です。
日本語では、口に出す場面と文字にする場面で語が分かれることがあります。御社と貴社も同じで、意味の強さが違うのではなく、話し言葉か書き言葉かの違いです。
場面ごとの使い分けは、次の表のとおりです。
言葉 | 読み | 使う場面 |
|---|---|---|
御社 | おんしゃ | 面接、電話、会社説明会、OB・OG訪問 |
貴社 | きしゃ | エントリーシート、履歴書、メール、お礼状 |
「より丁寧なのが貴社」ではありません。丁寧さの段階が違うのではなく、口に出すか文字にするかの違いです。
口頭で「貴社」を避ける理由
口頭で貴社が続きにくいのは、同音の語が多く、聞き手が一瞬迷うからです。 記者や帰社など、同じ「きしゃ」と聞こえる語もあります。
面接の短いやりとりで「きしゃを志望した理由は」と聞こえると、採用担当は文脈から会社だと分かりますが、あなたが書類を読み上げている印象にもなりやすいです。口頭では御社、と決めておく方が安定します。
面接では「御社」と「貴社」どちらを使う?
面接では「御社」を使います。 対面だけでなく、オンライン面接、電話、会社説明会、座談会でも同じです。画面越しでも、口に出す以上は話し言葉です。
ESに「貴社」と書いてある原稿を、本番でそのまま読む必要はありません。文字は貴社、声は御社、に置き換えて練習してください。
志望動機・自己PRでの使い方
結論の一文で御社を出し、その会社の仕事と自分の経験を1点でつなぎます。 呼び方を正しくするだけでは足りず、なぜその会社なのかまで届いて初めて会話になります。
評価される学生は「私はこういう人です」で終わらせず、「だから御社でこのように貢献できます」まで伝えていた、と成田さんは人事として面接に携わっていたときの観察を話します。
例文(志望動機)
私が御社を志望する理由は、法人営業でお客様の課題を聞いてから提案する仕事が、ゼミで仮説を検証してから動く進め方と近いと感じたからです。入社後は、まず顧客理解の速さで貢献したいです。
例文(自己PRの締め)
周囲の進捗を見える化して期限を守る進め方は、御社のプロジェクトでも再現できると考えています。
丸暗記した文章を貴社のまま読むと、面接官の質問に合わせて言葉を選べなくなります。キーワードだけ持って、その場の問いに御社で返す練習をしてください。
ES・履歴書・メールではどちらを書く?
文字にするときは「貴社」です。 エントリーシート、履歴書、送付状、日程調整メール、お礼メールも書き言葉なので、御社は使いません。
提出前に「御社」が残っていないか検索すると、話し言葉のまま提出するミスを防げます。逆に、面接の想定問答をノートに書くときは、声に出す前提なので御社で書いておいて問題ありません。
例文(ESの志望動機)
貴社の法人営業では、お客様の課題を聞いて提案する力が求められると考えています。大学のゼミで仮説検証を繰り返した経験を活かし、入社後はまず顧客理解の速さで貢献したいです。
例文(面接日程のメール)
先日は面接の機会をいただき、ありがとうございました。ご指定の日時で貴社オフィスへ伺います。
▼一次面接の通過メールへの返信文面は、以下の記事もご参照ください
【シーン別例文あり】一次面接通過メールへの返信はするべき?正しいタイミング・書き方を元人事が解説
面接で言い間違えたらどうする?
短く訂正して、次の文から会話に戻れば大丈夫です。 一度「貴社」と口に出しても、そこで長々と謝ると、呼び方より謝る時間が残ります。
言い間違いそのものより、そのあとに固まるかどうかの方が、基礎の受け答えとして見られやすい、というのが人事経験を踏まえた成田さんの見方です。短く直して質問に正面から答え直せば、呼び方のミスだけで話が終わることは多くありません。
直し方の例
相手の文が終わってから、一言訂正し、結論を続けます。 「ずっと貴社と言ってしまいました」と振り返る必要はありません。
例文
失礼しました、御社です。志望した理由は、法人営業で課題を聞いてから提案する仕事に、自分の進め方が近いと感じたからです。
途中で気づいたときは、文の区切りで差し替えるだけで足ります。「貴社、ではなく御社を志望しておりまして」のように二重に重ねると、かえって目立ちます。
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避けたい言い方
丁寧にしたつもりで、くどさや立場の取り違えが出る言い方があります。 次の3つは使わない方が安全です。
御社様・貴社様:すでに「御」「貴」で相手を立てています。同じ種類の敬語を重ねると、くどく聞こえやすいです。御社様まで付けると、慣れていない印象が出ることもあります。
相手の企業を「弊社」:「弊社」は自分側の会社をへりくだって指す言葉です。面接で応募先を弊社と呼ぶと、いまその会社の一員として話しているように聞こえます。
ESの「貴社」を読み上げる:文字のまま声に出すと、質問への返答ではなく提出書類の再生に近くなります。声に出す練習の段階で、貴社を御社に置き換えておいてください。
社名を繰り返すこと自体は誤りではありません。ただ、毎回「株式会社〇〇では」と固有名詞だけを置くより、御社で受けたあとに事業や仕事の中身を1つ足す方が、会話として自然です。新卒採用の面接で会社を指すとき、成田さんは、敬語を重ねるより呼び方を正しくして中身を伝える方を見ていた、という実務的な見方です。
銀行・学校・病院など、会社以外の呼び方
「社」が付かない組織には、種類に合わせた字を使います。 話し言葉は「御」、書き言葉は「貴」という対応は、会社のときと同じです。
新卒で出やすい相手は、次のとおりです。迷ったら応募要項や採用サイトの正式名称を確認してください。
相手 | 話し言葉(面接・電話) | 書き言葉(ES・メール) |
|---|---|---|
一般の株式会社 | 御社 | 貴社 |
銀行 | 御行 | 貴行 |
学校 | 御校 | 貴校 |
病院 | 御院 | 貴院 |
官公庁 | 御庁 | 貴庁 |
新聞社なら貴紙、雑誌なら貴誌、のように「社」以外の字へ替えるのが通例です。覚えきれないときは、面接前にその組織の呼び方だけ調べ、当日は話し言葉側(御〜)を使う、で足ります。全部を暗記する必要はありません。
呼び方より先に見られていること
御社と言えるようになることは前提で、評価が分かれるのは経験とその会社の仕事をつなげられるかです。 呼び方はできて当然の基礎点、志望理由や自己PRの中身は差がつく評価点、と考えると整理しやすいです。
成田さんが人事として面接を行っていた頃も、基礎点で大きく失点した学生は、志望動機や自己PRの内容がどれだけ優れていても見送りになりやすかったといいます。掛け算なので、片方がゼロに近いと全体も残りません。逆に、御社と貴社を間違えずに言えるだけでは、評価点はまだ乗っていません。
面接で先に用意したいのは、次の2点です。
声に出すときの語:御社(または御行・御校など)
つなぐ中身:その会社の仕事・事業・進め方と、自分の経験が重なる点を1つ
▼面接で聞かれる質問の全体像は、以下の記事もご参照ください
面接の質問対策4STEPと聞かれる質問80選を元人事が解説
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よくある質問
オンライン面接でも「御社」でよい?
問題ありません。
画面越しでも口に出す言葉は話し言葉です。チャット欄に会社を書くときだけ、貴社に切り替えてください。
会社名をそのまま言ってもよい?
言っても誤りではありません。
ただし毎回フル名称だけを繰り返すと硬くなりやすいです。御社で受けたあと、事業や職種の名前を1つ足す方が、なぜその会社なのかが伝わります。
「御社」の読みはおんしゃ?ごしゃ?
読みはおんしゃが一般的です。
ごしゃと読む人もいますが、面接ではおんしゃで統一して問題ありません。
グループディスカッションでも「御社」?
他の学生の前でも、口に出すなら御社です。
資料やホワイトボードに書くときは貴社です。話す/書くの区別は、一人面接のときと同じです。
英語面接では「your company」でよい?
はい。日本語の御社・貴社の区別は、日本語で話す場面向けです。
英語面接では your company、the company などが一般的です。日本語の面接対策を英語にそのまま訳す必要はありません。面接案内で使用言語が指定されていれば、それに合わせてください。
まとめ
話すなら御社、書くなら貴社、が基本です。 面接・電話・説明会は御社、ES・履歴書・メールは貴社。一度言い間違えても、一言直して結論に戻れば足ります。御社様や、応募先を弊社と呼ぶ言い方は避けてください。銀行や学校など社が付かない組織は、御行・貴行のように字を変えます。
呼び方は基礎点です。そのうえで、経験とその会社の仕事が重なる点を1つ話せるようにしておくと、本番の会話が安定します。一人で声に出す練習が難しいときは、第三者に途中で止めながら聞いてもらう方法もあります。
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